2013年6月27日木曜日

トヨタの品質問題

過去にアメリカで、トヨタのリコール問題が大きく取り上げられましたが、この問題で日本経済新聞に「トヨタリコール問題を聞く」と題して、米ペンシルベニア大ウォートン校准教授のラリー・ハービニアック氏と、米ミシガン大教授のジェフリー・ライカー氏のコメントが記載されていました。

ラリー・ハービニアック准教授は、この品質問題は品質を絶え間なく改善する「トヨタ文化」を世界の他の地域にうまく輸出できなかった結果ではないかと説いています。
品質より販売台数やコスト抑制が優先課題になっていなかったかと反省すべきだと話をしています。

一方のジェフリー・ライカー教授は、不具合はフロアマットやアクセルペダルの部品が主要な原因。また、プリウスは非常な複雑なブレーキ制御システムの中の1つのエラーだと説明し、この不具合でトヨタの技術力やモラルが低下している証拠はどこにもなく、この事でトヨタの経営や技術力を否定するような批判がでているのは非常に残念と説明しています。新聞、テレビの過剰ともいえる報道の結果、消費者の不安が想定を上回って高まっているとも話をしています。

二人の教授は正反対的な意見を述べていますが、私はジェフリー・ライカー教授のほうが適切な意見を述べているのではないかと思います。トヨタの問題を不具合発生そのものハード面と不具合発生時の対処方法のソフト面で考えてみます。

私もクライアント先の品質問題の解決を指導する場面が多々ありますが、大切な事は不具合が発生している現象と原因を正しく分析し、適切な改善策と今後の歯止めを実施する事、そして改善策を顧客に適切なタイミングで情報開示する事と思っています。

フロアマット不具合は、その要因が純正の全天候型フロアマットを固定せず使うと、マットが移動してアクセルペダルと干渉してアクセルペダルが全開になり戻らなくなる。アクセルペダル不具合は、アクセルペダル内部のフリクションレバー部が磨耗した状態で、この部分が結露するとアクセルの戻りが遅くなる。ブレーキ制御システム不具合は、低速で滑りやすい路面でABSが作動すると制動力の変化がおき、制動距離がドライバーの期待値より変化する。というような現象、原因が公開情報でわかります。

トヨタはセオリー通り、数百人の日本の技術陣を米国に送り、3現主義に基づいて記載したような現象、原因を確実に分析して暫定策、恒久対策を図ろうとしましたが、顧客の不安のほうが先に高まり、その対応を誤った結果としてトヨタバッシングになったのではないかと考えます。

製品そのものに対応するハード面の適切な処置と、顧客に対処するソフト面の処置がうまくリンクする必要があります。その観点から不具合が発生した場合は、現象・原因・対策の早い見極めと顧客への適切な情報開示が必要と思います。また、ハード面の改善策は信頼性工学でいわれる発生している現象を直接防ぐ対策と、故障が発生しても致命的な不具合にならないフェールセーフ的な対策が必要と考えます。この点ではトヨタは、この不具合でアクセルペダルが踏み込まれたまま戻らない異常が発生した場合は、ブレーキを踏めばとまれるシステムを、今後市場投入する全モデルに採用しました。

この品質問題を教訓として、他の日本企業も品質優位な経営を実行してほしいと思います

2013年6月17日月曜日

サムソン電子の経営の特徴

先日、リバース開発について、投稿をしましたが、
今日は第二段でサムソン電子の経営の特徴を説明したいと思います。

①トップダウン型の意思決定による俊敏な経営
 携帯電話のように製品のモデル変更のサイクルが早くなり、強力なリーダーシップによるすばやい意思決定を実施している



②グローバルな各市場で戦略的なマーケティングを実施
 日本企業のように、日本市場の製品を海外市場に持ち込むのではなく、各国の市場を戦略的にマーケティングし、顧客ニーズに適合した製品企画、開発を実施している



③要素技術、先行開発の調達
 日本企業のように全て自前主義でこだわるのではなく、自社でできない、要素技術、先行開発内容については、グローバルに他社から調達をする



④フォワード型設計ではなくリバース型設計推進
 全世界の他社の新製品を常に比較・解析し、機能、機構、仕様を見直し、顧客ニーズにあった量産開発を実施する



⑤グローバルに必要な人材の確保、育成
 グローバル展開できる人材を常に確保し、育成している。日本の技術者もこの人材戦略で確保し、日本の先端技術を調達している



いずれの内容も現在の日本の家電メーカにはない経営の仕方で、早急に、日本流の新たな経営の仕方を考え、実施する必要があると思います。

2013年6月7日金曜日

サムソン電子の成功要因

先日、クライアント先の事業企画責任者が集まって、日本の家電メーカの敗北とサムソン電子の成功要因を議論します。

私はこの議論の中で、サムソン電子が活用しているリバース開発の説明をする予定になっています。

1993年の私がコンサルタントになって間もない頃、日本の自動車メーカが実施している「ティアダウン」という手法を指導しました。

この手法は他社の新製品をボルト一本まで徹底分解して、自社の製品と比較し、機能、方式、構造、性能、仕様等についてブラッシュアップするテーマを抽出します。このテーマを自社の新製品の製品企画、コストリダクションに活かします。

日本語でいうと「イイトコドリ」ですが、0から製品を企画開発するより、短いリードタイムで市場のニーズに適合した製品を開発することができます。

サムソン電子はこの手法を「リバース開発」として、活用し、グローバルな各市場に適合した製品を企画開発してきました。この結果が成功要因の1つと言われています。

日本の家電メーカも原点に戻り、この手法を活用して、要素技術、先行開発力の優位性を活かしながら、量産開発でサムソン電子に負けている部分を取り返す行動が必要と思います。


議論の内容は、次回のブログに掲載いたします。

2013年6月3日月曜日

経営戦略の本質

本日は、競争優位戦略について説明をしたいと思います。

一般的に、ハーバードビジネススクール教授であったマイケルポーター氏が出版した競争優位戦略が有名ですが、戦略論は「競争に勝ち利益を得る」戦略として事業の戦略ポジションを重要にするポーターの競争優位戦略、同じく競争に勝つ為に企業の経営資源の強みを重点にするコアコンピタンス経営、そして、むやみな「競争をさけ利益を得る」非競争戦略をポイントにするブルーオーシャン戦略等があります。
もともと戦略は経営目的を達成する為に経営資源を有効に使い、顧客に受け
いられ、競合に勝つ為のツールであり、勝ち目のない無駄な競争を回避し、
競争相手の無力化にあります。
この競争戦略で当時、ポーターは経営戦略の本質を次のように言っています。
「経営戦略の本質とは競争企業とは異なった企業行動を選択する事、つまり、その企業特有の戦略ポジションをとることにあり、そもそも各企業が同じ目標を経営や業務の効率化に展開する事とは異なる。

従って、日本企業のほとんどには戦略は存在しない。日本企業の経営戦略の発想には事業環境の連続性を前提に、右肩上がりの成長を目標としているものの、差別化的な競争を否定し、組織を共同体として継続させるような事をトッププライオリティに掲げる傾向がある。このような思考から、自社特有の新しい戦略ポジションを模索したり、高収益を達成させるようなユニークな企業行動や経営戦略は生まれない。

アメリカ企業の経営戦略の発想には、企業価値を引き上げ、株主に報いるとともに、企業の社会評価を高め、最終的に経営者の価値(報酬)引き上げることが、その根幹にある。」
確かに高度成長時代の日本の企業の戦略は横並び思考を大切にし、競合と異なる土壌で戦う戦略らしき戦略はなかったように思います。ただバブル崩壊後、日本の企業の中でもユニークークな
戦略を立案し戦っている企業が数多く出ています。

マイケルポーターの競争優位戦略の3つの戦略ポジション
①コストリーダーシップ戦略(コスト力で競争に勝つ)
② 差別化戦略(商品、サービスで他社との差別化で勝つ)
③ 集中特化戦略(市場を特化し、経営資源を集中し競争に勝つ)
は有名ですが、この観点で日本の企業をみてみると、衣料品のファーストリテイリングのユニクロ、家具のニトリなどはコストリーダーシップ戦略をとり、低価格を武器に戦っています。
また、トヨタのハイブリッド車のプリウス、日産のEV車のリーフなどは明らかに差別化戦略をとり、他社にない差別化商品を出し競走優位を保とうとしています。

一方、最近話題になっている格安航空会社(LCC)は顧客ターゲットを絞り、その顧客だけのニーズ、要望を満たす集中特化戦略をとっています。
その典型が米国のサウスウエスト航空であり、ターゲット顧客を短距離路線(1時間)を利用し「安い航空運賃、早く搭乗したい、利用できる便数が多い、機内食不要」のニーズを持った顧客に絞り、この顧客のニーズを満足できるビジネスの仕組として、機内食廃止、機内清掃はCA、航空機をB737に絞込み、整備コストの低減、航空機の稼働率向上を図っています。
全日空も新会社を設立してこのLCCに近々、参入するようですが、この戦略ポジションをとった場合、既存航空事業とバッティングをする可能性があり、ユナイテッド航空、デルタ航空はこのLCCに失敗しています。戦略が異なる既存事業との明確な切り離しが必要と思います。


この競争優位戦略の戦略ポジションの考え方はあらゆる業種、サービスに活用できる考え方であり、コンサルティングの指導現場でも活用していきたいと思います。